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余生
何事モ十年デス。アトハ、余生ト言ツテヨイ。(太宰治『右大臣実朝』)
今週の電脳コイル(10話)
美しい! セリフもプロットも映像も何もかも。10話、さまざまな追憶。
叫んでしまうくらい今週はすごいです。派手な話じゃありませんが、濃厚な情報量と冴えた語り口が素晴らしい。
前半と後半で描写の響き合いが美しいので、順逆ばらばらな語りになるかもしれません。ご容赦。

ではまずサッチーVSイサコから。
サッチーは惨敗したように見えましたが、認可ドメイン外という表現を見るに、学校敷地内という条件が不利だったんですね。路上で戦ったらどうなるかわかりません。
とはいえハイパーイサコの戦力は圧倒的。ビームを完全に修復し(Cドメインに接続!)、霧の中にロストするなど超人の様相を呈してきました。どこがただの小学生なんだか。この話の後半で親戚が出てきて子供っぽさを見せるあたり、きれいな振幅です。

失神したハラケンはどうにか帰ってこれました。
この場面はそれより、”キラバグは呪われた物質”が気になりますね。カンナの日記で”イリーガルに近づくと友達が呪われる”とありますが、何らかの”呪い”がイリーガルにまつわるものとして語られる根拠もあるのでしょう。イサコの目的とも関わるのでしょうが。
おばちゃんの言動も少々気になる点があります。”まだキラバグは足りないはずなのにサッチーの論理結界を突破”という発言は、キラバグを集めるイサコの目的を把握しているように思えますが、イサコの正体そのものは知らない。考えられるのは、同じ目的で行動した誰かがいて、イサコの行動にそれを重ねているという所。以前の噂で出てきた「空間を壊そうとした暗号屋」とかぶりそう、とこれは憶測。

肝試しはグダグダのままドロー。ひとり常識人のアイコがいい味を出してますね。マイコ先生の自己満足ぶりがちょっと痛い。
そしてヘイクー分裂。ここのイサコの台詞、”自分の行動を自力で選択できない奴はいらない”がしびれます。これ、ガチャギリたちへの挑発と同時に、ダイチについていくことを選択したデンパを評価してるとも読めますよね。私的にはデンパ株は常時上昇する一方ですが、作中でも彼を重要視していると見える、気になる発言です。このフレーズが後半の山場にも響いてきますが、それは後ほど。
イサコの電話のシーン、ちょっと謎ですね。”お兄ちゃん”の謎はずっと残っているとしても、問題は電話の相手。実は電話なんてつながってなくて、お兄ちゃんと会話してる空想なんじゃないかと思ってしまいます。だとしたら映像のフェイクが見事ですね。少なくとも、電話の相手は”褒めて”くれない存在なんだろうとか。
さてダイチとデンパはふたりでメタバグ探し。過去のヘイクーのありように言及し、ちょっとした郷愁を醸し出します。そこへ重ねて”昔はメタバグがごろごろ取れた”と、失われた過去を示唆。もちろんこれは、神社というロケーションを介することで、後半を演出する通奏低音として心に残ります。
フミエの前でやたらかっこつけたがるダイチの粋がりぶりは微笑ましいですが、彼までイリーガルに手をつけようとしているのは危なっかしいですねー。どうなることやら。

探偵局チームは探索へ。同レイアウトで二度繰り返す出発シーン、キャラクターの位置でモチベーションの変化を表す細かい演出がよいですね。
そして問題の、4423に関する回想。まさか”ヤサコ”が4423に与えられたあだ名だったとは。ふたりの関係を強力に担保してますね。いっしょにデンスケ探した挙句ちゅーしてますから、そりゃあ結びつきすごいんですが。デレヤサコのかわいらしさは異常ですね。ヒロインらしくなってきたよ。

道順のパスワードという着想は、設定妄想としてもそうとう面白そうですね。カンナが何でこんなこと知ってたのか疑問は残りますが。
ともかくこれで、子供たちにしか踏みこめない古い電脳空間、という形で世界が大きく広がる可能性が示唆されました。普通は現実と電脳の二項対立ですが、ここにおいて電脳空間はさらに重層性を持つこととなったわけです。面白いですねー。
かくして見つけたカンナのパスワード。最初に出てくる時は逆向きで、しかもメガバァの部屋では逆さまの謎人形が映され、と演出に念が入っています。
ラブコメっぽく転がるヤサコにこちらも萌え転がりますが、彼女の意識ははたして4423に向いているのかハラケンに向いているのか、ちょっと微妙なところですね。頑強に否定するところがかえって怪しいし。

ここからヤサコとハラケンのシーンはガッチリつながった名シーンなので、先にイサコの病院シーンをまとめておきます。
エレベーターで『降りる』のが、さり気なくて怖い。上の階に何があったんでしょう? お兄ちゃんがいるってのが普通の推測でしょうが、両親という可能性もあり。親戚との微妙な関係も含め、イサコの微笑ましいながらも切ないシーンですね。
ところでここでは、イサコがメガネを取っていたのでミゼットに気づかなかったと思われます。が、何でミゼットなのか? アキラは日和見主義者なので誰かの命令で動いてんでしょうけど、それがダイチなのか他の黒客なのかフミエなのか、ちょっと読みきれません。有能なくせに流されやすいので、いいところで効いてきそうなキャラですね。

さて、カンナの日記とヤサコとハラケンですよ。日記を勝手に読んでしまった罪悪感をきっかけに、ふたりの関係は決定的な変化、あるいは断絶へと向かってしまいます。
ヤサコの”私は、もう見ない”のひとことが深い。カンナの思いへの敗北宣言か、あるいはハラケンに行動を任せることで自分の決断を放棄したか。いずれにせよ、前半のイサコの”自分の行動を~”という台詞とは相容れません。まるで関係のないシーンなのに、ふたりのキャラクターの差異を強烈に見せつけた上、話の流れをがっちりと引っ張っていく言葉として機能させる。いい演出です。
ハラケンは、カンナの意志を目指して突き進みます。これまでの話でたびたび描かれていた彼の隠された情熱が、ここにきてきわめて破壊的な形で彼を駆動していきます。その熾烈さと悲しさ。”戻ってきたら”はなかった。夏休みは完遂されなかった。ハラケンにとって今年の夏休みは、その喪失を埋め合わせるための最後の機会でしょう。それでも、カンナは帰らない。
ヤサコの”明日があるわ”というひとことが、あまりにも空しく響きます。日記の記述を否定し、あくまで未来があると言い放つ彼女の言葉はハラケンには届きません。明日は存在しないかもしれないことをいちばん知っているのは、カンナの日記を最も深く受け止めた彼なのだから。
演出も言葉も、すべてがこの最後の一点へと集約されるプロットの美しさには、ただただ脱帽するばかりです。ことストーリーに関しては、これまでで最高の回だったと思います。

さて、謎のカメラマンこと猫目も登場し、また話が別展開しそう。
次回は例の”クジラの唄”に関する話かな? 探偵局&デンパという変わった組み合わせが楽しみ。つうかハラケンが予告にまったく出てきませんでしたね。どうすんだろ。
作画的にはかなりすごそうで、こちらも期待大。


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